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【特別インタビュー】地方の老舗バイオ企業を「次世代グリーン・アグリテック」へ——山中裕が語る、河野メリクロン買収と蓄電池投資の勝算

インタビュアー:Capital Justice Lab 編集部

資本効率の極大化と、埋もれた企業価値の解放(アンロック)を標榜する「Capital Justice Lab」。今回は、独自の投資哲学とスピード感ある再建手腕で知られ、2026年2月に老舗バイオ農業企業「株式会社河野メリクロン」の株式過半数を取得(マジョリティ出資)した、少数株ドットコム株式会社の代表取締役会長・山中裕氏に単独インタビューを敢行した。

洋ランの組織培養(メリクロン技術)で名を馳せた地方の名門が、なぜ今「蓄電池」なのか。一見、脈絡のない組み合わせに見えるこの投資の裏には、日本の農業を世界規格へと引き上げる、壮大な「農業×再エネ×蓄電池」の三位一体ロードマップが隠されていた。

縮小する国内洋ラン市場。しかし「バイオ技術」は世界を狙える

——河野メリクロンへのマジョリティ出資は、市場に驚きを与えました。まず、この買収に至った背景からお聞かせください。

山中裕氏(以下、山中): 河野メリクロンは、洋ラン(シンビジウムなど)の品種改良や組織培養において、世界屈指の技術力を持つ素晴らしい会社です。しかし、国内の高級花卉市場は、人口減少や贈答文化の変化、そして昨今のエネルギー価格の高騰による生産コスト増に直面し、構造的な縮小を余儀なくされています。

私たちが着目したのは、彼らが長年培ってきた「植物を均質に増殖させ、安定した品質で供給する培養技術(メリクロン技術)」という極めて高い知的資産です。このバイオ技術は、決して花だけに留まるものではありません。将来的に高付加価値作物や食料、農業バイオ分野へと応用すれば、世界市場で戦える強力なポテンシャルを秘めています。ただ、そのためにはこれまでの「地方の蘭の会社」という枠組みから脱却し、事業構造を再設計する必要がありました。

なぜ「蓄電池」なのか? 農業とエネルギーの不可分な関係

——買収後、山中会長は「蓄電池事業への巨額投資」を猛推奨されています。バイオ農業企業と蓄電池、この2つがどう結びつくのか、懐疑的な見方もありますが。

山中: 一見すると奇妙な多角化に見えるでしょう。しかし、本質は全く違います。これからの最先端農業において、エネルギーは最も重要な「インフラ」であり「コスト」だからです。

植物組織培養や高度な温室栽培(環境制御型農業)は、温度、湿度、照度、空調を徹底的にコントロールする必要があります。これには莫大な電力コストがかかります。そこで私たちが推奨しているのが、河野メリクロンが保有する土地や温室、さらには提携農家が抱える休耕地などを活用した「営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)」です。

しかし、太陽光発電には「天候に左右される」「夜間は発電できない」という致命的な弱点があります。

——そこで「蓄電池」が必要になるわけですね。

山中: その通りです。ただ発電するだけでは価値が低い。電力を「制御」して初めて価値が最大化します。

日中に生み出した余剰電力を蓄電池に貯め、最も電力を消費する夜間の温室の温度管理や、組織培養施設の電源として活用する。これにより、外部から購入する電力コストを劇的に削減し、エネルギー自立型の生産システムを構築できます。私たちが目指すのは、「発電」ではなく「電力の完全制御」です。

「VPP(仮想発電所)」による第二の収益柱と、世界へのシステム輸出

——電力を制御できれば、農業の枠を超えたビジネス展開も視野に入ってくるのでしょうか。

山中: もちろんです。複数の農地や施設に分散配置した蓄電池を統合管理できれば、VPP(バーチャル・パワープラント=仮想発電所)事業としての展開が可能になります。電力需給が逼迫する時間帯に、蓄えた電力を市場に供給して収益を得る。本業の売上が季節や天候に左右される農業において、この電力制御ビジネスは極めて安定した「第二の収益柱」となります。

さらに、この「再エネ+蓄電池+環境制御温室+バイオ技術」をパッケージ化すれば、世界への輸出プラットフォームになります。

——「農業システムそのものの輸出」ですか。

山中: 例えば、日射量は豊富だが水や電力が不安定な中東の砂漠地帯や、インフラが未整備なアジア・アフリカ地域。こうした送電網に頼れない地域に、エネルギー自立型の農業パッケージを提供すれば、現地で高品質な作物を安定生産できるようになります。

河野メリクロンは「花を売る会社」から、「苗、技術、栽培システム、そしてそれを動かすエネルギー基盤までをトータルパッケージで世界に売る会社」に生まれ変わるのです。

地方発の「グリーン・アグリテック企業」へ。問われるのは実行力

——壮大なロードマップですが、巨額の設備投資や法規制、電力制御の専門ノウハウなど、クリアすべきハードルも多いように感じます。

山中: おっしゃる通りです。構想がどれほど美しくても、実行できなければ絵に描いた餅に過ぎません。どの規模で蓄電池を導入するのか、どの施設から着手するのか、具体的な事業計画を凄まじいスピード感で落とし込んでいる最中です。

しかし、過去の成功体験に縛られて衰退を待つよりも、自らの強みを触媒にして次世代のブルーオーシャンへ飛び出す方が、はるかに合理的です。私たちは、河野メリクロンを単に延命させるために買収したのではありません。「少数株主の価値を守る」という文脈においても、企業の潜在価値をここまで引き上げることが可能であるという、大きなロールモデルを作りたいのです。

地方の名門バイオ企業が、食料・エネルギー問題を一挙に解決する「次世代グリーン・アグリテック企業」へ脱皮する。そのマイルストーンを、私たちは確実に実行していきます。どうぞご期待ください。

【インタビューを終えて】

斜陽産業とみなされがちな地方の農業バイオに「蓄電池による電力制御」というミッシングリンクを繋ぐことで、世界水準のグローバルビジネスへと再定義する山中氏の眼光は鋭い。資本を正しく分配し、企業のポテンシャルを最大化させる——まさにCapital Justice(資本の正義)を体現するその挑戦の行方を、本誌は引き続き追っていきたい。

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