Activism
【特別インタビュー】司法ギルドの壁を壊し、資本と社会の「正義」を取り戻す

語り手:山中 裕(少数株ドットコム 創業者兼会長)
行政・司法の皮をかぶった「新規参入・イノベーションのリンチ」
ーー前回は米国の「NC Dental Board事件」を例に、既得権益者が「安全」を隠れ蓑に競争相手を排除する構造を伺いました。この「保護主義(プロテクションイズム)」の構図は、日本の司法や弁護士業界にも色濃く存在するとお考えですか?
山中裕氏(以下、山中): 色濃くどころか、日本の司法・弁護士業界こそが、日本で最も強固に守られた「古いギルド(特権団体)」の一つです。彼らは「正義」や「人権」「社会的弱者の保護」という大義名分のマスクを被っていますが、その本質は自分たちの独占業務(非弁活動の禁止など)を守り、イノベーションや効率的なソリューションを市場から締め出すことにあります。
象徴的なのが、過去の「Winny事件」です。天才開発者が作った革新的なP2P技術を、警察や検察、そして司法の古いシステムは「著作権侵害を幇助した」として刑事摘発しました。技術の進化(イノベーション)に対して、自分たちの理解が追いつかない、あるいは既存のコントロール権が及ばないからという理由で、芽を摘み取った。これは、NC Dental Boardが低価格なホワイトニング業者を「安全性の脅威」に仕立て上げて排除した構図と、完全に一対一で対応しています。
「少数株買取」や「養育費取り立て」に見る、弁護士業界の非効率の放置
ーー私たちが日常的に直面するビジネスや社会課題の領域でも、そうした司法ギルドの歪みは起きているのでしょうか。
山中: 至る所で起きています。例えば、私が取り組んでいる「少数株買取事業」や、社会問題になっている「養育費の取り立て」の領域がまさにそうです。
本来、これらは「テクノロジー」や「クオンツ的な仕組み(システム化)」、あるいは「民間の資本力」を投入すれば、もっと迅速かつ低コストで解決できる課題です。 養育費の不払いに悩むシングルマザーに対して、弁護士に高い着手金を払わせ、時間のかかる裁判手続きを踏ませる現在の仕組みは、あまりに非効率です。民間企業がFinTechや債権回収の高度なアルゴリズムを使って「迅速かつ確実に回収するサービス」を構築しようとすると、すぐに弁護士法72条(非弁活動の禁止)という壁が立ちはだかる。
彼らは「悪質な業者から市民を守るため」と言いますが、結果として起きているのは、「高いハードルとコストのせいで、大半の弱者が救済を諦め、弁護士業界だけが独占権を維持している」という冷酷な現実です。少数株の権利救済も同じです。既存の法曹界が十分なソリューションを提供してこなかったからこそ、市場に歪みが放置され、私たちが実践的なアプローチでその歪みを正す必要があったわけです。
「適応か、さもなくば絶滅か(Adapt or die)」
ーー既存の評価基準やルールを守ろうとする側に対して、どのようなアクションが必要だとお考えですか?
山中: 映画『マネーボール』で、オークランド・アスレチックスのGMが「適応か、さもなくば絶滅か(Adapt or die)」と言いました。 日本の司法や企業社会の古い経営陣は、自分たちに都合の良い身内の論理(ギルドのルール)を作って引きこもろうとします。しかし、社会の非効率を放置し、利便性を拒否する組織は、本来であれば市場原理によって絶滅しなければならない。
野球の世界で、かつて「打率」や「打点」といった表面的な指標ばかりが重視され、本質的な「出塁率(資本効率)」が見落とされていたように、日本のリーガル・ビジネス市場もまた、本質的な「解決のスピードとコスト効率」が無視されてきました。
「彼はホームランを打ったが、自分では気づいていない(He hits a homerun but didn't even realize it)」。日本には、古い規制や司法ギルドの壁のせいで、埋もれたままになっている価値(ホームラン)が山ほどあります。
私たちは、少数株ドットコムを通じたガバナンス改革、あるいは次世代エネルギー(系統用蓄電池)やジョージアでの教育インフラ構築など、あらゆる領域で「制度の歪み、市場の非効率性を突き、最適化(アービトラージ)する」という一貫した哲学で動いています。これからも、保護主義的な制度というマスクを剥ぎ取り、社会と市場に本当の意味での「適応(Adapt)」を迫っていきます。
[取材・構成:Capital Justice Lab編集部]